さて、もうすぐ・・・
HPバージョン更新
HPバージョンといっても読みやすいように、まとめて置いてあるだけなのですが。
私は古い人なので小説はブログよりも、普通のホームページの方が好きです。
ブログは日記といった感じを受ける気が。
でも、ブログだと何か更新しないと・・・と強迫観念に迫られ?更新できます。
・・・やっぱりブログの方が良いのかな。
僕、〇〇に引っ越しました(倉庫バージョン)
こちらからか、リンクは右端の下にあります。
私は古い人なので小説はブログよりも、普通のホームページの方が好きです。
ブログは日記といった感じを受ける気が。
でも、ブログだと何か更新しないと・・・と強迫観念に迫られ?更新できます。
・・・やっぱりブログの方が良いのかな。
僕、〇〇に引っ越しました(倉庫バージョン)
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冬 渡しの側
ようやく、この地域にある「遊び場」を把握できた僕は、こたつの中で大好きな鬼平犯科帳を読みふけっていた。
そう、この地域に遊べる場所という物は存在しないのだ。
あっても総合ショッピングセンターの子供用フロア。遊べなくもないけど二十分もかけて行くものじゃない。
小説を読んでいると、牛久に行くのに渡し船に乗って……という記述があった。
たしか近くに、渡し船があった場所があると聞いた記憶がある。
祖父が一緒にコタツに入って寝ている。
祖父は意外と博識だってことは親父も伯父も認めているし、若い頃はどこかの何とか研究所にいたとかって聞いた。悪いけど起こして聞いてみる。
「じいちゃん、近くに渡し船あった所、知ってる?」
「ん……あ、ああ。寝とった。……ガマの油売りがどうした?」
博識って評価は、ちょっと棚の上に置いとこうかと思う。
「いや、渡し船だってば」
「ガマの油、いやガマの渡しだ。時代は徳川家康。鷹狩りに使ったと記録にある。
まあ、昔より一キロ下流に置いてあるがなぁ」
「ほほー流石じいちゃん!」
コタツ上にあった使用済み日めくりに祖父の言った事をメモしながら、褒めることも忘れない。機嫌を損ねれば鳥居塚家存亡の危機になりかねない。
「土手近くの大きな木のある場所だから、行けばすぐわかるぞ。石碑もあるしな」
「ありがと!」
棚の上に置いた博識の評価を元に戻して、僕は石碑を見に外に出る用意をした。
自転車に乗って緩やかな坂をゆっくりと下ると、左に田んぼ、右に白菜畑が見えてきた。
冬まで保存するためか白菜の頭は藁で縛ってある。
土手までの道は農作業のためアスファルトになって楽だったけど、土手の道は砂利道でつらい。歩きで来ればよかったと後悔した。
土手沿いに向かって一キロほどの所に大きな木が見える。
農業用の白いビニールが木に絡まってチラチラと舞っているようだ。
目的地は祖父の言うことが正しければ、あれで間違いない。土手沿いに、あの木以外一本も生えていなかった。
砂利道でバランスを崩した僕は、自転車を置き歩いて行く事にする。親父が使っていた通学用自転車なんて、古すぎて誰も盗まないだろう。通行の妨げにならない様に草むらに置いた。
とぼとぼと歩きながら畑をよく見ると白菜畑の奥にネギ畑が見える。下は田んぼ、と覚えていたけど違ったみたいだ。
ようやく木がある場所に着くと、木がかなり大きい事に驚いた。ビル二階分はあるだろうか。
冬のため葉を付けてないので種類は分からない。植物に興味はないので付いていたとしても、たぶん分からないだろう。
「……なに、しているの」
「ぎゃっ」
突然の声と姿。僕は情けない声で叫んでしまった。
見ると白の丸襟ブラウスに紺のジャケット、プリーツスカートの女の子が木の後ろから、ひょっこりと出てきた。まるで入学式の小学生のようだ。
これで幽霊なら泣いて帰る自信がある、と思いながら下を見ると、ちゃんと脚は付いていた。
黒のストラップシューズが光っている。
半透明にもなっていなかった。
幽霊ではない事にホッとし、ここに来た理由を説明することにする。
「ガマの渡しっていう石碑のある場所が……」
「石碑ってこれのこと?」
「ちっさっ!」
本当に小さかった。高さ四十センチくらいの石の杭と言ってもいい。想像では二メートルくらいの石碑だったが、まったく違った。
「それに、ガマの渡しじゃないみたい」
と、町が建てた説明看板を指さし言う。
「……がまんの渡し」
(じいちゃん、惜しい。
……いや、これ惜しいのか)
がまんの渡しの事は町の説明看板のおかげで理解できた。
洪水なのに家康が舟夫に無理言って渡ったことから「がまんの渡し」ということらしい。それはもう、どうでもいい。この子の方が問題だった。
「君、お家は……」
どこ?と聞こうとしたとたんに寒気、そして
突然の眩暈が襲った。立っていられなくなり木の傍に腰を下ろす。
僕はそのまま気を失った。
ぼんやりと木の板が見える。視界がはっきりすると自宅の天井で僕は布団に寝かされている事が分かった。
異様に体が寒く、頭上で鐘をガンガンと鳴らされる様に頭が痛い。
シャッと引き戸を開ける音がし祖父が入って来た。
「起きたか」
「あの子は……」
「あの子のことは心配するな。
中久喜と一緒に、今頃電車に乗って青森に向かっとる」
珍しく、ゆっくりと喋ると僕の頭を撫でてくれる。僕はしっかりと動かない脳みそをフル回転させて、疑問をぶつけてみた。
「青森に帰っても……また……」
「いや、それはないだろう。あの場所だからあの子が毎回出てきただけだ。青森の八戸に戻れば時々しか現れなくなるだろうな」
「……」
返事をするのが熱のおかげで苦しく二、三回頷いて返事をした。
熱を出して二週間目。今日、中久喜さんが帰って来たと祖父が言っていた。
あの女の子はあまり木から出なくなったそうだ。
彼女があの場所に、何故いたのだろうか。人の来ないあの場所で、何かを待っていたのか……
僕の熱はまだ下がらない。
終
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